フルサイズミラーレスが描くアイルランドの空には“説得力”があった――パナソニック「S1R」と巡るアイルランドの旅【前編】

アイルランドは、イギリスの西にある北大西洋のアイルランド島の大部分を領土とする立憲共和制国家。国土は7万300平方キロメートルと日本の北海道より一回り小さいサイズだ。人口は約476万人。国の首都は島の東側にある街「ダブリン」に置かれ、約134万人が暮らす。壮大な自然と人懐こい国民性、コーヒー、ウイスキー、そしてそこかしこに中世の遺跡が存在する国としても有名だ。

 

今回、そんなアイルランドを、2019年注目のフルサイズミラーレスカメラ、パナソニック「LUMIX S1R(以下、S1R)」を連れて旅してみた。

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【機材紹介】ミラーレスカメラとしては大柄な印象も問題はない

まずは簡単にカメラについて触れておこう。

 

パナソニック「LUMIX S1R」は画素数約4730万画素のフルサイズミラーレスカメラ。大きさは幅 約148.9mm×高さ 約110mm×奥行 約96.7mm、重さは約898g(本体のみ)と、ミラーレスカメラとしては少々大柄な印象だ。

▲2019年3月23日に発売された「LUMIX S1R」。先日発表された「カメラグランプリ2019」では見事大賞に輝いている。参考価格は税込50万990円(ボディ)

 

だが、パナソニックはこのS1Rをプロの仕事にも対応できる機種として位置付けており、いわゆる“プロ機”とされているDSLR(デジタル一眼レフカメラ)と比べると大きさは大差ない。筆者自身もそうしたカメラを歴代使い続けてきたが、そこを基準にすれば大きさ・重さは特に気になるものではなかった。

 

ミラーレスカメラにおいて、レフレックスが無いため小さくすることができるというメリットがあるのは確かだが、今後はフルサイズミラーレス、特にS1Rのように多画素かつプロユースを見据えた機種は、熱問題や搭載するプロセッサーの大きさなどからこのサイズが増えていくのではないかと筆者は考えている。

 

いよいよ旅のはじまり! 迎えてくれたのはアイルランドらしい曇り空

旅の準備を終え成田空港へ到着、早速移動開始である。日本からアイルランドへは直行便がないため、途中アブダビ空港でトランジット。

 

ようやく、ダブリン国際空港へ到着。窓越しのダブリン国際空港はアイルランドらしい曇り空で迎えてくれた。

 

レンタカーを受け取り、さあ旅の始まりだ。

さっそく走り出し、東にあるダブリンから西に向けて移動。その道中、アイルランドらしい空を見ることに。

 

空や海を描き切る豊かなグラデーション

この時期のアイルランドの気温は、最高でおよそ13度から15度、最低気温は、山間では2度~3度まで冷え込む。天気は、スッキリ晴れる日もあるが、1日を通して雲が多く、急に晴れたと思えば、いきなり激しい雨が降ってきたりと目まぐるしく変わる。

この日も上の写真のように晴れと雨が混在する空模様。このアイルランドらしい空をさっそくS1Rで撮影してみる。撮影後リアモニターに浮かび上がったS1Rの画の第一印象は「グラデーションが豊かだな・・・」と思わせるものであった。明暗のついた芝の再現、雲の起伏、空の青のグラデーションなど非常に特徴のあるグラデーションを見せる。

 

グラデーション再現や立体感はレンズに依存する部分もあるのだが、カメラ本体が持つ基礎体力も重要な要素である。先ほどの写真でいえば、奥にみえる雨雲のグラデーションや手前の雲の起伏はまさにそうしたカメラの担う部分で、この部分の諧調が丁寧に再現されていると立体感のある画となる。

 

順調に西海岸へ移動し、この日の夕陽を海辺で迎えることに。ここでもグラデーションの良さを見ることになった。

上の写真は、WBを晴天日陰へ変更し、夕暮れ感を強調して撮影したのだが、グラデーションの再現が非常に良い印象だ。陽のあたる海にさざめく波の再現、ここで細かく波が再現されていると立体感を感じる画となる。

 

また、空の部分にも注目したい。このようなシーンでの空の部分は、力のないカメラではのっぺりした赤がノルだけになるのだが、よく見ると雲の起伏や様々な赤のグラデーションが再現されている。さらに、シルエットになっている2人の影の縁、陽の当たる岩棚も黒つぶれせず再現されているところを見ると、ダイナミックレンジの広さもうかがえる。

 

グラデーションの再現の良さが「画の説得力」につながる

初日を終えてS1Rのファーストタッチの印象は個人的には好印象であった。グラデーションの再現が良いというのは、画の様々な部分に影響してくるからだ。筆者が生業にしている風景撮影では、グラデーションの再現が良いと「画の説得力」が違ってくる。

 

例えば、1枚目の写真のように青空を大きく切り取り雲を入れ込んだ画でいえば、グラデーションの再現が良いと青空のカラーグラデーションと共に雲が浮き出るように再現され、立体感が増して画に説得力が出てくる。また、2枚目のような夕日の再現では夕陽特有の「陽の柔らかさ」を表現することができ、逆に陽の強い朝日では力強く「夜と朝の狭間」を表現することができる。

 

筆者はクルマの撮影もよく行うのだが、その際もグラデーションの再現が良いとボンネットやサイドボディの立体感が違ってくるため、クルマのボディデザインの起伏や塗装の質感が伝わり、画の説得力が増すのである。

 

教会の撮影でわかったこと

アイルランドの教会は、イタリアやフランスなどとは違った、シンプルな印象の教会が多い。今回撮影で訪れた教会もシンプルなつくりではあるが、美しく、そして荘厳な空気をもつ教会であった。

平日の日中、しん・・・と静まった教会、わずかなシャッター音もはばかれる空気のなか、撮影を始めた。ヨーロッパのほとんどの教会は三脚使用禁止、当然この教会も三脚が禁止されている。

 

また基本的にどの教会でも教会の中は薄暗く、ガンガン感度を上げて撮影することになるのだが、細かい部分までしっかり記録しようとするならある程度絞らなければならない。そうなると、感度を上げてもスローシャッターになってしまうことが多い。

 

手持ちでスローシャッターともなれば成功率を上げるため連射で撮影することになるのだが、教会の中のしん・・・とした無音に近い空気のなかではなかなか気が引ける。だが、S1Rのシャッター音は非常に小さく「祈りの邪魔にならない」程度の大きさだったので、教会の雰囲気を壊すことはなかった。

 

また、ここでは手ブレ補正の強さも感じた。このときの撮影データは、ISO3200、 F7.1、SS1/25秒と手持ち撮影が厳しくなってくるシャッタースピードである。ましてや高画素機となればこのくらいのシャッタースピードでもかなり気をつかう。しかし筆者の心配をよそにS1Rはしっかりと手ブレを補正してくれた。ちなみに今回の旅のなかで、手ブレ補正はどのくらい効くのかを試したのだが、その様子は後にお話しすることにしたい。

 

次回は操作性やフォトスタイルについて見ていこう。