ハイクラスと“ほぼ同じ中身”をもつ「X-T30」はコスパ抜群の実力機だった!【X-T30レビュー:前編】


富士フイルムは少し変わったカメラメーカーだと思う。というのも、多くのメーカーはカメラのラインナップを「センサーサイズ」「センサーの画素数」「画像処理エンジン」「機能」「ボディ筐体」など多くの点で違いを持たせてクラス分けしているのだが、富士フイルムは大雑把にいえば「ボディ筐体」の違いだけでクラス分けをしているのだ。

 

例えばX-Pro2というレンジファインダータイプのスナップシューター御用達の優れたカメラがあるが、X-H1、X-T2、X-T20、X-E3、X100Fという合計6機種が同じ「センサー」「画像処理エンジン」を搭載している。レンズ一体型のX100Fを除けばもちろんマウントも同じであり、使用できるレンズもすべて同じだ。

 

なのでちょっと極端に言えば、同じ状況で同じレンズを使用すればどのカメラでも全く同じ画像が撮れてしまうということになる。そのなかで注目したいのがX-T10に連なるシリーズ。X-Tシリーズの中級機でコスパに優れたクラスだ。

 

さて、前置きが長くなったが今回紹介するのは「X-T30」。X-T20の後継機にあたる、X-T2桁シリーズの3代目となるカメラだ。

▲2019年3月発売のX-T30。実売価格は11万4960円(ボディ)

 

上位モデル「X-T3」と“同じ中身”を搭載

富士フイルムの“中身はだいたい同じ法則”からすればいずれかの機種と同じとなるわけだが、なにを隠そうX-T30はX-Tフラッグシップで昨年9月に登場した「X-T3」と中身が同じ。単純に「そうか、X-T3の弟分か」と判断してしまいそうなものだが、X-T3と“中身が同じ”ということがかなり特別なことであると言える。X-T3の中身が優れすぎているからだ。

 

X-T3とX-T30の中身、注目すべきはなんと言っても第4世代のセンサーと画像処理エンジンだ。それぞれセンサーが「X-Trans CMOS 4」、画像処理エンジン「X-Processor 4」となっている。センサーやプロセッサーの進化というのは時代と共におおむねゆっくりと進化をしていくものだが、この第4世代組は2段飛びくらいの進化をしてしまっている。

 

<作例>

夕日に染まる桜をバックにまるっと花を付けた桜を撮影。過ぎゆく春の名残惜しさを夕日のオレンジ色がより印象的に演出してくれた。ダイナミックレンジ拡張機能を使わず常用感度のISO160で撮影しているが、背景の白とびは最小限でなおかつ主役の桜の色もしっかりと描き出されている。眩しい逆光状態でもファインダーを見続けられるEVFの特性に加え、カメラ内で極めて美しいJPEG画像を作り出してくれるフィルムシミュレーション機能を持つXシリーズのファインダーを覗くことは、実に眼福である。

富士フイルムX-T30 XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR(360mm域) 絞り優先 F5.6 1/50秒 ISO160 WB:6050K フィルムシミュレーション:Velvia

 

X-Trans CMOS 4は2610万画素とX-Trans CMOS 3の2430万画素からの微増ではあるが、センサータイプが裏面照射型CMOSセンサーとなった。感度もISO160〜12800と従来のISO200〜12800と大きく変わらないが、低感度側が増えたことは風景やスタジオなどポートレートなどでうれしい改善点だ。

▲APS-Cサイズの有効2610万画素CMOSセンサーを搭載

 

画素数は2610万画素と今の時代では高画素とまでは言えない数値だが、ご存知のとおり富士フイルムのX-Trans CMOSセンサーはベイヤー配列のセンサーとカラーフィルター配列が違うためローパスフィルターが不要であり、解像力が非常に高い。プリント作品としての仕上げも長辺2m程度ならなんなく引き伸ばせる。

<作例>

流れる桜をスローシャッターで描いた。描写力自体はX-T3と同等であるため非常に滑らかで階調性のある表現が可能だ。NDフィルターを使い6.5秒のシャッタースピードに設定した。X-T30は常用最低感度がISO160になったのでスローシャッター表現も以前より少しやりやすくなった。

富士フイルムX-T30 XF35mmF2 R WR 絞り優先 F11 6.5秒 ISO160 WB:4150K フィルムシミュレーション:Velvia

 

ここまでだとそれほど目立った進化ではないと思われるかもしれないが、どんな部分が驚異的な進化なのかといえば、それは「スピード面」だ。

 

驚異的な進化を遂げたスピード性能

まずAFの進化が著しい。XシリーズのAFは像面位相差AFとコントラストAFのハイブリッド方式を採用しているが、高速なAF動作を担うのが像面位相差AFだ。この像面位相差AFの範囲がX-T20では画面の約40%の範囲だったのがX-T30では画面約100%まで広がった。これにより画面のどこに被写体があっても高速なピント合わせが可能になったのだ。スポーツやネイチャー写真はもちろん、子どもやペット写真などあまり止まってくれない被写体に対しても恩恵は大きい。

▲画面の約100%で像面位相差AFが可能

 

AFに関しての改善はセンサー面だけではない。X-T20ではフォーカスポイントの移動は十字ボタンで行っていたが、X-T30ではフォーカスレバーが採用された。上下左右に加え斜め4方向の8方向に対応しているためスピーディーにフォーカスポイントの移動が可能となった。

▲背面モニター横に設置されたフォーカスレバー。ファインダーを覗きながらでも右手親指で操作しやすい位置だ

 

なお、従来の十字ボタンは省略されファンクション機能などはタッチパネルにて行うスタイルに変更となっている。これに関しては好みの分かれるところかもしれないが、よく使うファンクション機能はFnボタンやAE-Lボタン、AF-Lボタンなど物理的なボタンに登録し、補完的にタッチパネルへ登録すると使いやすいだろう。

 

そして高速性といえば連写だ。X-T20の高速連写は最大14コマ/秒とすでにかなりのコマ速を実現していたわけだが、X-T30ではそれをさらに上回る最大20コマ/秒を達成している。さらには画角を1.25倍にするクロップモードでは最大30コマ/秒まで連写速度を上げられるのだから驚きだ。なお上記の数値は電子シャッター時のものであり、メカシャッターではX-T20もX-T30も最大8コマ/秒となる。

▲電子シャッターの使用で最大20コマ/秒(1.25倍クロップモード時は最大30コマ/秒)の高速連写が可能

 

また高速連写に付随した機能として新たに「プリ連写」機能が追加された。これはシャッターボタンを半押しすると画像の仮記録を始め、全押しすると最大20コマさかのぼって本記録される機能だ。生き物の動き出す瞬間など、これまで人間の反応速度では捉えきれなかったものを撮影できるようになった。なおプリ連写機能は電子シャッター時のみ使えるため、こうした連写機能をよく利用するユーザーは基本的に電子シャッターに設定しておくのがいいだろう。

<作例>

桜の花をついばんでいたヒヨドリの飛び立つ瞬間をプリ連写モードで捉えた。こうした瞬間の写真はこれまでスポーツやネイチャーのプロフェッショナルなカメラマンだけが撮影できた世界だが、このプリ連写のおかけで誰でも手軽にチャレンジできるようになった。ローリングシャッター歪みはあるもののX-Trans CMOS 4は以前のセンサーより読み込み速度は早くなり自然な描写になった。

富士フイルムX-T30 XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR(400mm域) マニュアル F8 1/1000秒 ISO2500 WB:オート フィルムシミュレーション:ASTIA

 

次回は、X-T30が下克上モデルたるゆえんである「色」についての機能や、上位モデルとの違いについて見ていこう。

【後編】富士フイルム史上最大の下克上!? 「X-T30」の“色”に感服