機材レポート

昭和を代表する写真家が愛した銘玉は、ありもの部品の組み合わせで生まれた!?

中村文夫の古レンズ温故知新「smc PENTAX SOFT 85mm F2.2」

昭和を代表する女性ポートレートの第一人者、秋山庄太郎さん(1920〜2003年)は、「花の写真家」という別の顔を持っている。なかでもソフトフォーカスレンズを使った作品が有名で多くの作品を残しているが、この撮影にメインで使われたのが今回紹介する「smc PENTAX SOFT 85mm F2.2」だ。

smc PENTAX SOFT 85mm F2.2

ソフトレンズの銘玉は、既存の部品の組み合わせで生まれた!

ソフトフォーカスレンズはレンズ構成により、さまざまな種類に分けられるが、このレンズはいわゆる単玉タイプ。レンズ構成は1群2枚なので厳密には単玉とは言えないが、ベス単フード外しに代表される古典的ソフトフォーカスレンズの仲間と言えるだろう。

鏡筒前側の絞り環が太くなった不思議な形をしているが、これは既存の製品の寄せ集めだから。光学系はデンタルマクロという歯科用接写システムのクローズアップレンズの流用で、これに67用200mmレンズの絞りユニットと接写用アクセサリーのヘリコイド接写リングが組み合わせてある。

また一部のプロ写真家から他社ボディで使いたいという要望があり、ニコンF、ヤシカコンタックスなど他社用マウントの製品が、ごく少数作られた。

 
smc PENTAX SOFT 85mm F2.2

単玉タイプのソフトフォーカスレンズは周辺部の像の崩れが大きく、レンズ単体だと渦を巻いたように写る傾向がある。これを避けるため、秋山さんは1.4倍のテレコンバーターを組み合わせていた。

 

 
smc PENTAX SOFT 85mm F2.2

レンズ構成は1群2枚というシンプルな構成。そのため後側から見ると中は空っぽ。

 

 
smc PENTAX SOFT 85mm F2.2作例(撮影:中村文夫)

芯のある描写と被写体の輪郭からにじむように現れる美しい光芒が、このレンズの特徴。ただし被写体が最もシャープに写るピント位置とフレアが最も大きくなる位置が異なるので、ピント合わせには慣れが必要だ。

PENTAX K-1 F2.8 1/60秒 ISO200 アコンバーターA1.4×-L使用

 

 
〈文・写真〉中村文夫